彼との出会いはバイト先の料亭でした。
彼は経営者で、接待でうちのお店をよく利用してくれていました。
大人でかっこいい彼に、私は少し憧れていました。

ある日、一人でお店に来ていた彼からドライブに誘われました。私は彼に彼女がいるのでは？もしくは既婚者では？と不安がよぎりましたが、嬉しさが勝ってしまい、誘いに応じてしまいました。

ドライブ当日は、とても楽しかったです。
何も言わなくても全てエスコートしてくれてお姫様扱いでした。夢のようなもてなしに、そのまま食事からホテルまで流されてしまいました。

帰り際に、
「実は妻も子供もいる。結婚はしてあげられないけど、好きだから付き合いたい。」
と告白されました。あまりにずるい告白に腹が立ちましたが、彼の事を好きになってしまった私は承諾してしまいました。

お付き合いが始まると、
「自分は顔が広いから、誰かに見られると大変な事になる」
と彼に言われました。
なので、彼と会う時はいつも人目を避けて、夜にこっそりとホテルに入るのがデートのパターンでした。

一度だけ旅行に行った時も、隣の県境まで車のシートに伏せて人目を避けるように言われました。
そんな扱いでも、背徳感と会っている時の彼の優しさに、私は燃え上がっていたように思います。
また、彼の話す大人の世界や、2番目の女でも耐える私自身に酔っていた自分もいました。

3年ほど、そんな付き合いが続きました。
ある日、彼がマイホームを建てると嬉しそうに話してきました。それを聞いた時、私は何とも言えない虚しさに襲われました。
彼はこのままマイホームを建て、将来は孫に恵まれたりと人生をステップアップしていくだろう。私はこのままだと、年をとっても何も残らないと思うと急に目が覚めました。
いつまでも2番目でいるのは無理だとも思いました。
そしてすぐ彼に別れを切り出しました。

しばらく彼は、復縁を迫ってきましたが、私の意志が固いとわかり諦めてくれました。その後、また新しい彼女を作ったようです。

私はそれ以来、既婚者や彼女がいる人とは絶対に付き合わないと決めています。